第二回 大型化する風車を、どう安全につくる? ― 浮体式洋上風車を「高精度に解析する」研究 | 秋田県南部沖浮体式洋上風力実証事業

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2026.10.30
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第二回 大型化する風車を、どう安全につくる? ― 浮体式洋上風車を「高精度に解析する」研究

研究テーマ紹介 EPCI ジャパン マリンユナイテッド株式会社

洋上風力発電の風車は、設備コストを下げ、より多くの電気をつくるために、年々大型化しています。

風車が大きくなれば、当然、それを海の上で支える「浮体(浮体構造を指します。)」も大きくなります。

では、浮体を単純に「大きく、頑丈につくればよい」のでしょうか。

実は、それだけではありません。

必要以上に頑丈につくれば、使用する鋼材(またはコンクリート)が増え、製造コストも高くなります。一方、脆弱につくりすぎれば、安全性や信頼性に影響する可能性があります。

そこで重要になるのが、浮体式洋上風車にどのような力が加わり、どのように変形・振動するのかを、より正確に予測し最適な浮体を設計する技術です。

今回ご紹介する研究では、大型の浮体式洋上風車を対象に、高精度な構造解析手法を確立し、信頼性と製造コストの両方を最適化することを目指しています。

「風車」と「浮体」を一体に解析する

この研究のポイントの一つが、連成解析です。

風車と浮体は、実際の海では別々に動いているわけではありません。

風を受けた風車の動きは浮体に伝わり、さらに係留に伝わります。波を受けた浮体の動きは風車だけでなく係留にも影響します。

風車、浮体、係留の相互作用を一体として考える必要があります。

そこで本研究では、

  • 風車-浮体-係留系の連成解析に基づく設計手法の確立・高度化

に取り組んでいます。

図1 風車と浮体・係留の動きの相互作用(イメージ)

大きな風車ほど、「振動」が重要になる

風車には、風によってさまざまな力が加わります。

さらに、浮体式洋上風車では、浮体に海からの波の力も同時に受けます。

特に風車が大型化すると、浮体式洋上風車が持つ「固有振動(すべての物体が持っている、形や重さによって『決まったリズム』で揺れる性質のこと)」が、これまで考慮されてきた波による揺れに加えて、風車から伝わる力によっても引き起こされる可能性があります。

たとえば、ブランコを想像してみてください。

ブランコには「揺れやすいリズム(固有振動)」があります。そのリズムに合わせて力を加えると、小さな力でも揺れが大きくなります。

これを「共振」といいます。

大型の浮体式洋上風車でも、これに似た現象を考慮する必要があります。

そのため、浮体式洋上風車を単なる「硬い構造物」として扱うのではなく、力を受けて変形する弾性体として解析することが重要になります。

詳細・解説

なぜ従来の解析だけでは足りない?

これまでの海洋構造物では、浮体を剛体(変形しない硬い物体)と仮定し、波の中での揺れ方を解析するところから設計を始めていました。

一方、大型の浮体式洋上風車では、風車が大型化することにより相対的に柔らかくなるため、浮体式洋上風車全体の弾性変形を考慮することが重要になります。

そこで、本研究では従来の海洋構造物の設計技術に加えて、弾性変形を考慮した高精度な解析法の開発に取り組んでいます。

風車が「共振しにくい領域」を選ぶ

タワー自身が揺れやすい固有振動数の周波数をどの領域に設定するかが重要となります。

外力発生の元となる、ブレードの回転による励起振動数(1P)やブレード通過による周波数(3Pなど)との大小関係によって、soft-soft(=1Pより低い)、soft-stiff(=1Pと3Pの間)、stiff-stiffなどに分類されます。

本研究で対象としている大型風車と浮体では、タワーの固有周波数を3Pより高い領域に設定する「stiff-stiff」設計としています。

stiff-stiffは、風車の回転による主要な振動との共振を避けやすい一方、高い剛性が必要になるため、構造重量やコストが増える可能性があります。

だからこそ、単純に「硬く、頑丈につくる」のではありません。

風車と浮体・係留を一体として高精度に解析し、安全性と経済性の両立を図ることが重要になります。

「安全側につくる」から「必要な強さを見極める」へ

構造物を安全につくることは最優先です。

しかし、解析に不確かさが大きければ、その分だけ余裕を大きく取った設計が必要になります。

高精度な解析によって、

どこに大きな力がかかるのか
どこを強くする必要があるのか
どこに過剰な材料があるのか

を、より合理的に判断できるようになります。

つまり、この研究が目指しているのは、単なる「軽量化」ではありません。

必要な安全性・信頼性を確保しながら、過度に安全側とならない設計とし、浮体式洋上風車の製造コスト低減につなげることです。

図2 構造解析システムのイメージ

「解析だけでは終わらない」― 水槽実験で確かめる

コンピュータによる解析技術を高度化するだけでは、十分とはいえません。

大切なのは、解析によって予測した浮体式洋上風車の動きや構造応答が、実際の現象をどこまで正しく再現できているかを確認することです。

そこで本研究では、単なる解析技術の向上だけでなく、解析手法の妥当性を確認するため、水槽に実際に模型浮体を浮かべた実験と組み合わせた検討も進めています。

水槽実験では、模型に波や風など実際の海の条件を与え、そのときの浮体の動きや応答を計測します。そして、その結果とコンピュータ解析による予測を比較します。

解析 → 実験による確認 → 解析・設計手法の精度向上へのフィードバック

というサイクルを繰り返すことで、解析手法の信頼性を高め、より合理的な浮体設計につなげていきます。

大型化していく浮体式洋上風車を、安全に、合理的に、そして低コストで海に浮かべる。

そのための「設計の手本」をつくることが、この研究の大きな役割です。

研究者に聞いてみた!

Q. 高精度な解析ができると、なぜコストを下げられるのでしょうか。

A. 解析精度が十分でない場合、構造物は安全性を確保するために余裕を大きく取って設計する必要があります。大型浮体式洋上風車の挙動をより正確に予測できれば、必要な強度を適切に見極めることができ、過度に安全側となる設計を避けることができます。過度に安全側の設計は、余分な材料を投入することになります。安全性と信頼性を確保した上で、必要十分な設計を実現することで、浮体式洋上風車の製造コスト低減につながることが期待されます。

次回予告

浮体式洋上風力発電は、風車や浮体だけで成り立つものではありません。

風車、浮体、係留、海底ケーブル、施工、運転・保守――。多くの設備や企業、工程がつながって、初めて一つの発電所として機能します。そして、その「つなぎ目」には、仕様や情報の受け渡しなど、思わぬリスクが潜んでいます。

次回は、問題が起きてから対応するのではなく、設備と設備、企業と企業、工程と工程の境界にあるリスクを事前に見つけ、それらを低減させる「インターフェース」の研究をご紹介します。

「つなぐ」ことを、どう設計するのか。
大型化・商用化していく浮体式洋上風力を支える、目には見えにくい重要な研究に迫ります。