第一回 浮体式洋上風力発電の普及を支える「発電コスト低減」の研究 | 秋田県南部沖浮体式洋上風力実証事業

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2026.09.30
研究テーマ紹介

第一回 浮体式洋上風力発電の普及を支える「発電コスト低減」の研究

研究テーマ紹介 第1回 分野:事業開発 | 担当:丸紅洋上風力開発株式会社

本シリーズでは、秋田県南部沖浮体式実証事業の研究内容のご紹介をしていきます。
シリーズの全体像は下記リンク先よりご覧ください。
▶ 連載・海に浮かぶ風車による日本の新しいエネルギー開発 ― 浮体式洋上風力の「低コスト化」に挑む研究プロジェクト ― | 秋田県南部沖浮体式洋上風力実証事業

第1回となる今回は、浮体式洋上風力発電の普及を支える「発電コスト低減」の研究についてお届けします。

 

「洋上風力発電は環境に優しい。」

そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

実は、洋上風力発電が本格的に普及するためには、乗り越えなければならない大きな課題があります。それが発電コストです。

海の上に巨大な風車を建設するには、風車本体だけでなく、浮体や係留設備、工事船、運転・保守など、多くの技術と人が関わります。現在は建設費や維持管理費が高く、コスト低減や施工期間の短縮が普及への重要な鍵となっています。

日本だからこそ期待される「浮体式」

そのため今、多くの企業や研究機関が浮体式洋上風力発電に力を入れています。

その理由は、日本には世界でも有数の大きな可能性があるからです。

日本周辺の海域では、水深50mより浅い海域に設置できる着床式洋上風力の導入ポテンシャルが約128GWと試算されています。一方、水深50mを超える沖合まで対象を広げた浮体式洋上風力では約424GWと、約3倍以上の導入ポテンシャルがあります。

さらに、洋上風は陸から離れた沖合ほど強い風が安定して吹くという特徴がありますが、一方で日本では急激に深くなる海底地形の特徴があります。こうした日本特有の地理条件から、浮体式洋上風力は将来の主力電源として大きな期待が寄せられています。


図1 日本周辺海域における洋上風力の導入ポテンシャル
※導入ポテンシャルは一般社団法人 日本風力発電協会JWPA「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 第1回会合 資料4-1」を基に作成

詳細・解説

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーへの期待が高まる中、日本では浮体式洋上風力発電の研究開発が加速しています。

洋上風力発電は、陸上よりも強く安定した洋上の風を利用できるため、大量の電力を供給できる可能性を秘めています。特に日本は、海岸から比較的近い場所でも水深が深くなる地形が多く、海底に基礎を固定する「着床式」よりも、浮体を海上に浮かべて設置する「浮体式」に適した海域が広く存在します。

JWPAの試算では、日本周辺海域における洋上風力発電の導入ポテンシャルは、着床式が約128GWであるのに対し、浮体式では約424GWと、約3倍以上の開発可能性があるとされています。導入ポテンシャルが非常に大きい一方、その実現にはコスト低減が不可欠であり、本研究はその基盤となる技術開発を進めています。

コストを下げるには、風車のコスト低減だけでは足りない

この事業では、浮体式洋上風力発電所全体を一つのシステムとして、

例えば、

  • 建設方法をもっと効率化できないか
  • 工事船の運航を最適化できないか
  • 保守点検の回数や方法を改善できないか
  • 発電設備をより効率的に運用できないか

といった幅広い視点から、コスト低減・施工期間の短縮の低減の可能性を検討しています。

詳細・解説

浮体式洋上風力では、風車だけでなく、浮体構造物、係留設備、海上での施工、大型作業船、運転・保守(O&M:Operation and Maintenance)、撤去など、多くの要素が事業全体のコストに影響します。

そのため、本事業では設備単体の性能向上だけではなく、建設から維持管理までを含めたシステム全体を対象に、コスト低減や工程作業時間低減につながる技術や運用方法を検討しています。

建設方法の効率化、作業船の運航計画、保守点検方法の改善、発電設備の運用最適化など、さまざまな要素を組み合わせて検討することで、トータルコストの低減を目指しています。これは、一つひとつの設備性能を向上させるだけでは実現できない、「全体最適化」という考え方です。

また、コストには初期コスト(Capex)とランニングコスト(Opex)があります。

例えば、家をイメージしてください。

防音性・耐熱性・防汚性の高い住宅は、建設コストはかかりますが、音を遮断する厚い絨毯やカーテンは不要ですし、エアコンの使用量は低く、外壁の塗り直しの頻度も低いでしょう。

一方で、これらの性能が低い住宅は、建設コストは低いですが、電気代などかかりますよね。

この事業では、初期コストとランニングコストのバランスも視野に入れて検討しています。

図2 浮体式洋上風力発電のCapexとOpexのイメージ

未来のエネルギーをもっと身近に

本事業は、単に発電施設をつくる研究ではありません。

日本の豊かな洋上風力資源を活用し、再生可能エネルギーをより身近で安定したものにするための挑戦です。

加えて、日本の置かれているエネルギー安全保障の観点からも洋上風力発電への期待は高まっています。

このような背景を踏まえ、浮体式洋上風力発電コストを下げる研究は、その未来を実現するための大切な第一歩です。

今後も本事業では、さまざまな技術開発を通じて、持続可能なエネルギー社会の実現を目指しつつ、アジア展開を見据えた国際競争力のあるコスト水準で商用化する技術の確立を目標としています。

研究者に聞いてみた!

Q. なぜ今、多くの企業が浮体式洋上風力発電に取り組んでいるのでしょうか。

A. 日本では着床式だけでは十分に風力資源を活用できません。一方、浮体式であれば沖合の安定した風を利用できるため、導入ポテンシャルは約424GWと非常に大きく、将来の主力電源として期待されています。その実現にはコスト低減が不可欠であり、本研究はその基盤となる技術開発を進めています。

次回予告

洋上風力発電の風車が大型化すると、それを海の上で支える「浮体」にも、これまで以上に高度な設計技術が求められます。

次回は、波だけでなく風による力や浮体の変形・振動まで考慮し、大型浮体をより正確に解析する技術をご紹介します。

「安全性を確保しながら、浮体をもっと合理的に、低コストに設計するには?」

高精度な構造解析と設計最適化が、浮体式洋上風力のコスト低減にどのようにつながるのか、その研究に迫ります。